夜尿症について

夜尿症とは「(夜間)睡眠中に不随意に尿を漏らす」ことをいいます。複数の要因が関与しているとされており、①睡眠から覚醒する能力、②夜間の膀胱の蓄尿能力(膀胱容量)、③夜間の尿の生成(夜間多尿)のミスマッチが原因であるといわれています。また夜尿症は夜尿症が消失していた期間があったとしても6カ月に満たない症例が一次性夜尿症、これまで6カ月以上消失していた時期があった症例を二次性夜尿症と分類されます。また夜間のみで日中は特に困る症状のない単一性夜尿症と、日中にも失禁症状や排尿症状などのみられる非単一性夜尿症に分類されます。

夜尿症の有病率

夜尿症の有病率は、わが国の単一症候性夜尿症患者で、5歳で15%、6歳で13%、7歳で10%、8歳で7%、10歳で5%、12-14歳で2-3%、15歳以上で1-2%とされております。

夜尿症の診察、検査

まず問診にて一次性か二次性か、また単一症候性か非単一症候性かなどや、日中の症状について詳しくお聞きします。またその他必要に応じて他院での治療歴や夜尿の頻度や、家族歴、既往歴、生活リズムなどを確認します。お聞きします。また尿検査、腹部の超音波検査、腹部や腰仙部の診察、必要に応じて陰部の診察などを行います。非単一症候性夜尿症の場合は造影検査など行う場合がありますが、初診時に行うことはありません。治療経過とともに相談しながら行っていきます。

夜尿症の治療

自然治癒することもありますが、本人や家族の方のお気持ち、捉え方に応じて下記の治療を選択していきます。夜尿症の治療効果として、生活指導をはじめとする治療介入で、自然経過に比べ治癒率を2-3倍高めることができ、治癒までの期間も短縮し、1年後の治癒率は未介入の症例では10-15%、治療介入した症例では50%程度が治癒するという報告もあります。

1. 薬物療法

デスモプレシン製剤(点鼻スプレー、経口内服薬)、抗コリン薬(内服薬、貼付剤)などがあります。デスモプレシンは抗利尿ホルモンであり、睡眠前に投与することで夜間の尿量を少なくする薬です。必要以上に水分が体にあっても強制的に体内に貯留してしまう可能性があり、水中毒や脳浮腫など重篤な副作用を起こす場合があり服用には注意が必要です。抗コリン薬は基本的には単独では使用しませんが、デスモプレシンとの併用で効果がある場合があります。第一選択では使用しません。

2. アラーム療法

夜尿アラームとはおむつや下着にセンサー部分を装着し、実際におねしょをしたときにセンサーが反応しアラームを鳴らすという治療器具です。作用機序は不明な点が残されておりますが、古くから実践されており①夜間の尿産出量の減少、②尿道括約筋の反射的収縮による排尿抑制、③睡眠中の機能的膀胱容量の増大などの効果があるとされております。